1. 石垣島の貴重な自然と農業を破壊 「小さな島の巨大な開発」
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石垣島 前勢岳に計画されている「石垣リゾート&コミュニティー計画」(以下「計画」と呼ぶ)は、島の貴重な自然と農業を破壊する、これまでにない規模の「小さな島の巨大な開発」です。
この計画は㈱ユニマットプレシャス社(以下ユ社と略す)に石垣市が協力するかたちで進められ、地域未来投資促進法による地域経済牽引計画として沖縄県に承認されています。そのホテルの規模は巨大で571室にもなり、ゴルフのロングコース18Hを併設、戸建てビラを含め(一棟を除く)すべてのホテルにプールがつく豪華リゾートです。
しかし、これは持続不可能な事業であることが分かっています。この計画では、1日約700t(年間255,000t、東京ドーム・124万㎥の2杯分)もの地下水を使用します。そんな大量の地下水を小さな前勢岳で維持することはできません。このことはユ社自身も認めています(「環境影響評価報告書」参照)。
石垣市はこの計画による経済効果を250億とうたっています。しかし、持続不可能な事業計画である時点で、その見込みは破綻しています。同時に、その経済効果の計算方法は、仮定の人数が過剰、費用が含まれていないなどの多くの問題点があります(後日解説記事作成予定)
こうした矛盾に加え、石垣島の自然や農畜産業への悪影響を及ぼす重要な問題を抱えた計画なのです。
2. 絶滅危惧種1A類 カンムリワシの危機
カンムリワシの聖地
国の特別天然記念物のカンムリワシ。 石垣市の市鳥で、市のマスコットキャラクターぱいーぐるのモデルでもあります。八重山古典民謡の代表的な曲、鷲ぬ鳥節(ばすぃぬとぅるぃぶし)でもカンムリワシのあやぱに(幼鳥の美しい羽)が歌われています。元世界チャンピオンの具志堅 用高氏のニックネームとしても有名です。
そんな愛されているカンムリワシですが、絶滅危惧種1A類に分類され、最も絶滅が危惧されている鳥類の一種です。正確な数は不明ですが、石垣島にはわずか100羽程度の生息、多くとも200羽はいないと言われています。
前勢岳北側の里と森はカンムリワシが生息する聖地です。
計画地をテリトリーとして、営巣・子育てをしているカンムリワシが2組、森の中で生息する若鳥もいます。餌場とするペアも2組も確認されていることから、少なくとも10羽以上がこの里と森にくらしています。
開発が強行されれば、生息するカンムリワシは追い出され、生存できません。石垣島にはカンムリワシが生息できる環境が多く残っていません。他の場所は既に他のカンムリワシのテリトリーです。このため、追いやられたカンムリワシは他の生息地に潜り込むことが出来ないと考えられています。
島内に200羽もいないであろう、そのうち少なくとも10羽が犠牲になるインパクトを考えて下さい。
経済効果が不透明な娯楽施設の代償としては大き過ぎるものではないでしょうか。
また、この計画で犠牲となるのはカンムリワシだけではありません。
その他の悪影響についても下記に紹介します。
計画地の希少生物
開発予定地にはカンムリワシ以外にも多くの希少生物が生息しています。
ヤエヤマホタルやサキシマヤマトンボなどの昆虫類、イシガキパイヌキバラヨシノボリなどの淡水魚類や天然記念物であるキシノウエトカゲ、セマルハコガメなどの爬虫類。
いずれも、八重山でしか出会えない生き物たちです。
この開発により、これら希少な生物の生息地が奪われ石垣島の生物多様性が損なわれます。
幻想的なヤエヤマホタルの群集 多くの市民・観光客が観賞に訪れる
日本最南端のラムサール条約湿地 名蔵アンパル
大規模ゴルフリゾート建設予定地のふもとには、ラムサール条約(水鳥を守るための国際条約)で定められた湿地である名蔵アンパルがあります。同時に、この近辺は西表石垣国立公園に指定されています。
名蔵アンパルには多くの甲殻類や貝などの小さな生き物が多く生息しています。こうした小さな生き物はゴルフ場の維持のために使用される農薬や、地下水利用による塩分濃度の変化で生態に大きな影響が予測されます。
同時に、これらの生き物を捕食する水鳥の生態をも脅かすことに繋がるのです。
サガリバナ群落
開発予定地には数少ないサガリバナ群落があります。一夜限り咲いては散る花の光景は幻想的です。
シーズンには島内外の人がを愛でに訪れ、観光価値が高い・地元民にも愛されているスポットといえるでしょう。
そうした石垣島の資産のひとつがリゾート開発により失われてしまうのです。
名蔵湾の巨大現生サンゴ群集
また、名蔵アンパルから海に出た名蔵湾には貴重な巨大な幅70mにもいたる、現生のシコロコモンサンゴ群集が報告されています。
近年の温暖化・富栄養化により、石垣島でもきれいなサンゴ群集が残っている場所は多くありません。
この名蔵湾のサンゴ群集は、名蔵アンパルとその前部に育つ海藻・
ゴルフリゾート建設により名蔵アンパルの生態系が崩れ、名蔵湾の現生サンゴ群集にも悪影響がおよびます。ダイビングなどの観光業・漁業にとっても打撃を受けることとなります。
周辺の農畜産業への悪影響
建設予定地の周りには、カンムリワシが舞う自然と共生した水田や畑地・牧草地が隣接しています。
そうした農畜産業への影響として、下記のような問題点が挙げられています。
- ふもとの田んぼ農家は、
今でも計画地内からの川の水を使っているため、水の利用に悪影響が予測されます。 - ゴルフリゾート建設用地からの農薬流出や排水の影響も調査されていません。
- 開発にともない、これまで自由に行き来できていた道がふさがれ、営農地への通行が妨げられます。
- 補助金を投じて牧草地として開拓された場所が農振除外になるということは、今後の石垣島における農畜産業への補助金がおりにくくなり、振興を妨げるリスクになると考えられます。
3. 市や県との協議
石垣市に対して、「本計画」に潜む暗部「換地問題(※)」について「住民監査請求」を提出しました。
9月22日に「回答」が出ました。監査結果は予想通り「却下」でしたので、今後「住民訴訟」になります。
※別途解説記事作成予定
他、石垣市の「市民の森」が「事業区域」に含まれています。市民の財産である「山林」を無償貸与・一部有償貸与する計画となっています。他に類をみない、異例の待遇です。これは公共事業ではありません。一営利企業の事業です。なぜこれほどまでに石垣市が貢がなければならなのでしょうか。こちらについても住民監査請求を進めて参ります。
また、県に対しては農振除外について、慎重に判断いただくよう要請しています。この計画全体の帰趨を決めるのは開発地の「農振除外・農地転用」です。県が開発地の農振除外を決定をした場合には、この開発を止めるために訴訟に進むしかない状況となります。そうならないために、沖縄県とギリギリまで交渉をするという判断をしています。
県による最終的な決定は2022年12月までに下されます。照屋副知事には現地視察に起こしいただきました
4. 「カンムリワシの里と森を守る会」を結成し、島の自然・農業を守るために結束しましょう!
かけがえのない島の自然と暮らしを守るために、石垣島の島民、専門家、島外の自然を愛する方々の結束が必要です。世論を味方につけるためのSNS発信などの広報活動の強化、調査研究などの活動を行う必要があります。市民参加型のイベント(「市民の森を歩く会」・「市民の森コンサート」)開催など、支援の輪を広げるための新たな取組みも企画しています。
また、県の決定によっては、この開発を止めるために訴訟に踏み切らざるを得ない状況にあります。
そうなった場合、この訴訟をどうにかして成功させなければなりません。幸い、環境保護裁判のエキスパートである籠橋隆明弁護士(JELF・日本環境法律家連盟理事/かつてアマミノクロウサギ原告裁判を担当)ら著名な専門家諸氏が支援を表明してくれています。最低限、弁護士・原告の交通費や諸経費の確保は不可欠で、クラウドファンディングなど、あらゆる手段を駆使した支援金を募るための取組みを行います。
皆さんも、ぜひ私たちと一緒に新たな取り組みにチャレンジして下さい。前勢岳で暮らすカンムリワシたちも、皆さんのご参加を心待ちにしています!
会の趣旨にご賛同いただける方は
講演および結成総会にご参加ください